減配の可能性のため株価が急落した英国の高配当株,グラクソ・スミスクライン(GSK)に続いて,メルク(MRK)までも急落しました.
キイトルーダというオプジーボ(小野薬品が開発,ブリストルマイヤーズが世界販売)の親戚のような新しい抗腫瘍薬に対する期待で,株価は上昇していましたが,結果が伴わなかったようです.
悪決算に続いて,まさかの発表があり,株価は急落しました.
まさしく,そんなこと「聞いてねぇだ〜」となったようです.
キイトルーダ
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)をご存じでしょうか?
医療費の増大によって国家を破綻させると問題となった,オプジーボ(ニボルマブ)と同じように免疫チェックポイント阻害薬です.
どういう機序で癌をやっつけるのかは難しすぎるので説明できませんが,従来からのいわゆる抗がん剤,数年前からどんどん進歩してきた分子標的薬剤とは違った作用機序の抗悪性腫瘍薬です.
抗がん剤と分子標的薬剤を併用した標準治療が効かなくなった状態からでも,劇的に効く患者さんがいます.
森元首相もオプジーボが著効し,元気にされています.
キイトルーダに関しては現在日本では,肺癌や悪性黒色腫に適応があるようです.
がん免疫療法の新薬キイトルーダ(ペムブロリズマブ)とオプジーボ(ニボルマブ)の違い – がん情報サイト「オンコロ」
キイトルーダの売り上げの上昇が,そのままメルクの成長につながると予想されています.
実際,キイトルーダの売り上げはライバルのオプジーボに迫ってきています.
メルクの決算
キイトルーダの第3四半期の売上高は、前年同期比194%増の10億5,000万ドルでした。世界的に適応症が広がったことによって、売上高は引き続き増加しました。
しかし,主力のキイトルーダが好調であったにもかかわらず,第3四半期の製薬部門の収益は92億ドルで、前年同期と比較して3%減少し,コンセンサス予想を下回りました.
そのため,先週の金曜日(2017年10月27日)に株価はストンと落ちました.
2回目のストンの理由
上記の短期チャートを見ると,大きな窓を開けて,ストン,ストンと2回落ちています.
1回目は悪決算を受けての下落でしたが,2017年10月30日月曜日の下落の理由は?
メルクは,ヨーロッパでの,転移性の肺癌の第一選択薬として,キイトルーダとカルボプラチン(抗癌剤)との併用療法での新規適応追加の申請を取り下げました.
KEYNOTE-021というフェーズ3の臨床試験(患者を化学療法単独群と化学療法+キイトルーダ群に無作為に割り付けし,化学療法に対するキイトルーダの上乗せ効果を判定する試験)を行っています.
化学療法単独と比較してキイトルーダ併用群の全体的な奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を示しました.
しかし,全生存期間(OS)の改善効果の結果がまだ出ていない(臨床試験に参加した患者さんがある程度亡くならないと結果がでない)ので,申請を取り下げたようです.
このOSの重みが強く,OSで有効性が示されなければ有効とは見なされないようです.一時は効くけど結局長生きできていないなら,高いお金を払ってキイトルーダを併用する理由はないだろう,ということです.
Merck Has Good Reasons for Its Keytruda Delay - Bloomberg Gadfly
OSの結果が判明するのが2019年以降になるようで,それまでは適応追加によるキイトルーダの売り上げ増が見込めません.
これを嫌気して,2回目のストンがおこったようです.
メルク長期チャート
メルクのここ5年の株価チャートです
2014年9月に米国で初めてキイトルーダの発売され,2014年頃から株価の上昇が始まっています.
45ドル以下をうろちょろしていた株価ですが,直近では65ドルまで上昇しています.
キイトルーダの売り上げ増加を見込んでの株価上昇と考えていいのでは?
見通し
オプジーボにしろキイトルーダにしろ,今後も適応となる疾患は増えていくと言われています.実際に日本では胃癌に対するオプジーボが承認されました.
新たな需要が生まれていて今後も成長が期待されますが,その分競争が激しい分野でもあります.
まとめ
メルクの下落は以下の2点です.
- キイトルーダの売り上げ増にもかかわらず,全体としての利益は予想を下回った
- キイトルーダの新規適応申請を取り下げた
下落した株価をどうとらえるか,判断が難しいところです.
ご安心ください
メルクの株価が復活しました.
肺癌に対して結構「効いてる〜だ〜」