国外源泉徴収税は連続増配米国株への投資をためらう理由になるのか?
米国株投資のブログを拝見していると,「国外源泉徴収税(米国株からの配当には米国で10%源泉徴収される)が損なので米国株投資をためらう」といった意見を見かけます.
確かに10%もの源泉徴収が最初にされ,さらに日本で約20%の源泉徴収が行われると,単純に計算して配当額の70%しか手に入れることができなくなります.
だからといって連続増配米国株への投資をためらう理由になるのでしょうか? 検証してみました.
設定条件
為替の影響,4半期ごとの配当など考慮するといろいろな条件が絡み合って,検証不能になるため,単純なモデルとして日本円での計算と年1回の配当とします.
国内の源泉徴収税率も復興税を除く20%で計算していきます.
モデル1
Aさんは配当利率3%の米国株を100万円分所有しています.
配当利率3%の株100万円分からもらえる配当は3万円です.
国外源泉徴収税
米国の配当にかかる税率は10%です.
米国株の配当がAさんの口座に振り込まれるまでに,まず10%が米国で引かれます.
30,000 × 0.9=27,000
国内での源泉徴収
国内での源泉徴収税率は20%(所得税15%+住民税5%)です.
米国で源泉徴収された後の27,000円に20%の税金がかかります.
27,000 × 0.8 = 21,600
受け取り配当額
3万円支払われた配当が,Aさんの手元に届く時にはなんと21,600円まで減ってしまいました.
米国で源泉徴収されると,元の配当金の72% が振込額となります.
源泉徴収されない場合と比較し,8%のマイナスです.
3万円の配当の場合の差額は2,400円です.
これが損する感覚の原因となります.
外国税額控除
米国で源泉徴収された3,000円については,外国税額控除の確定申告を行えばいくらかは戻ってきます.
上記の2,400円の差は小さくなります.
所得の額などに依存しますので,今回は割愛します.
小括1
- 米国株の配当は,現地で10%,日本で20%の源泉徴収が行われ,最終的には配当額面の72%が振り込まれる.
- 国外での源泉徴収税率が0%,もしくは日本国内株からの配当金とは8%の差がでる.
- 外国税額控除を確定申告することで8%の差はもう少し小さくなる可能性がある.
モデル2
Bさんは配当利率3%の米国株を100万円分所有しています.
この株は連続増配株で毎年コンスタントに5%の増配を行っています.
1年目
モデル1のAさんと同じですので,最終的にはBさんは21,600円の配当を得ました.
2年目
配当が5%の増配となりました.3万円の5%の増配ですので
30,000 × 1.05=31,500
配当額は31,500円になりました.
この額に,米国で10%の源泉徴収がされ
31,500 × 0.9 = 28,350
(米国での源泉徴収額は3,150円)
28,350円に日本での20%の源泉徴収がされ
28,350 × 0.8 = 22,680
Bさんは2年目には22,680円の配当を得ました.
3年目
さらに5%の増配となりました.
31,500円の5%増配ですので,
31,500 × 1.05= 33,075
配当額は33,075円になりました.
この額に,米国で10%の源泉徴収がされ
33,075 × 0.9 = 29,767
(米国での源泉徴収額は3,300円)
29,767円に日本での20%の源泉徴収がされ
29,767× 0.8 = 23,814
Bさんは3年目には23,814円の配当を得ました.
(米国での源泉徴収額を示すために順を追って計算していますが,Bさんが受け取った配当額に1.05を賭ければ簡単に計算できます)
4年目
同様に計算していくと4年目には約25000円になります.
増配のない日本株との比較
もしBさんが連続増配しない配当利率3%の日本株に投資していた場合と比較し,3年目には追いつき4年目には逆転します.
国外源泉徴収に打ち勝ったことになります.
小括2
- 連続増配株からの配当は国外源泉徴収されても,国内の非増配株からの配当金に数年で追いつき,追い越す.
- 配当利率3%,増配率5%の場合は3年目には非増配株と同等の配当額になる.
結論
国外源泉徴収税は連続増配米国株への投資をためらう理由にならない.
以上のような結論となりました.
条件の設定によっては期間の短縮・延長があります.
外国税額控除を行えばいくらかの国外源泉徴収税は還付されます.
米国以外で国外源泉徴収がかからない連続増配株があれば,その銘柄に投資することがベターな選択になると思いますが,選択肢は限られると思います.
国外源泉徴収税のことは気にせずに,連続増配米国株への投資を継続していきます.