牛乳を飲まないという娘のワガママと,給食も教育の一環である事実の間で,こちらの意見ばかりを主張するのはいかがなものかと思いましたが,さらし者にするという,牛乳問題とはまったく関係のない対応をされましたので,記事にした次第です.
今回は本題である,給食と牛乳について調べてみました.
給食の牛乳
学校給食に牛乳が出てくることに関しては,文部科学省が出した省令に根拠があります.
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=329M50000080024
学校給食法施工規則の第一条で,
学校給食の開設の届け出は,学校ごとに次の各号に掲げる事項を記載した届出書をもってしなければならない.
とされ,その事項の中に,
完全給食とは、給食内容がパン又は米飯(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他の食品を含む。)、ミルク及びおかずである給食をいう
と定義されています.
つまり完全給食とするならばミルク(牛乳)を含まないといけないということになります.
給食の牛乳に関しては,いろいろ紆余曲折があり,飲ませなくてもよさそうな雰囲気(あくまでも雰囲気)の時期があったりしたようですが,結局はこの完全給食の定義が残り,現在でも給食にはミルクが含まれなくてはならないようです.
牛乳と骨形成
「牛乳にはカルシウムがたくさん含まれていて,牛乳飲まないと大きくなれないし,骨も強くならない」
といわれていますが,
本当??
成長期には骨がぐんぐん伸び,そのためにはたくさんのカルシウムが必要だ.
たくさんのカルシウムを摂取させるためには,たくさんのカルシウムが含まれる牛乳を飲ませるのがよい.
身長が高いあの子は,1Lの牛乳を毎日欠かさず飲んでたらしいよ・・・.
なんとなくこんな感じでしょうか?
個人が個人の考えに基づいて,牛乳の効果を考えて行動するのは自由です.ヒアルロン酸を口から飲んで膝が楽になると思えば,勝手に高いお金を払って何かを飲むことも自由です.
しかし,小学校,中学校といった集団に対して,税金を使って一律に介入を行うならば,しっかりとしたエビデンス(証拠,根拠)がなければなりません.もしエビデンスがないならば,構築する努力をしなければなりません.
牛乳と骨成長にかんする論文をググってみました.
牛乳とカルシウムと骨
牛乳やカルシウムを多く含む食品,カルシウムのサプリなどが骨の成長,骨密度にどのような影響をあたえるのか?
この疑問に答えるために,外国ではおおくの研究が行われています.いくつかの研究結果を統合した結果をまとめたものがメタアナリシスとよばれ,一番エビデンスレベルが高いとされています.
まずPediatricsという雑誌にのった論文です.
Calcium, dairy products, and bone health in children and young adults: a reevaluation of
この論文の結論は,
Scant evidence supports nutrition guidelines focused specifically on increasing milk or other dairy product intake for promoting child and adolescent bone mineralization.
子供の骨を強くするために,ミルクや他の日常的なカルシウム製品の摂取を増やそうとする栄養ガイドラインを支持する根拠は薄い.
(スキャント:おニャン子クラブの「ゾウさんのスキャンティー」を思い出します)
では牛乳ではなく,カルシウムのサプリメントを飲ませたら,骨が強くなるのでは?
ということで,健康な子供にカルシウムのサプリメントを与えた場合に,骨密度が増加するのかどうかを検証した論文です.
これはコクランライブラリーに載っています.
Calcium supplementation for improving bone mineral density in children. - PubMed - NCBI
この論文の結論は,
The results do not support the use of calcium supplementation in healthy children as a public health intervention.
健康な子供に,公的な健康推進事業としてカルシウムのサプリメントを用いることを支持しない.
2つの論文を紹介しましたが,エビデンスとしては,
- 牛乳を飲んでも骨は強くならない
- カルシウムの摂取量,サプリを増やしても骨は強くならない
という結論となります.
日本の給食の牛乳
給食の牛乳は,戦後の栄養不足の時代に子供の栄養状態改善を目的に提供を開始した.時代背景を考慮すると,この方針は完全に否定されるものではないが,現代の食生活,栄養状態では,牛乳を飲むことで骨が強くなるというエビデンスはなく,学校給食法施工規則で規定されたミルクの提供に明確な根拠はなく,時代遅れの省令であると考えます.
他の例えを用いてみると,
包丁での切り傷を縫ったあと,膿んだらあかんからと,毎日欠かさずイソジンで消毒するために通院することを厚生労働省が省令で規定している.
と同じような状況となります(実際にはそんな省令はありません).
省庁が,エビデンスのないことを行うよう省令をだしている.
あってはならないことです.
他にも?
給食の牛乳にも明確なエビデンスがないわけですから,他にももっとおかしなことが行われているのではないか?
エライいとされる人,発言力が強い人の思いつきで,なんとなく雰囲気で,昔からの慣習で,業界団体との癒着で・・・.
少し前の発刊となりますが
「学力」の経済学 中室牧子著
読んでみました.
親御さんはよく言いますよね,
「テレビやゲームをやめて,勉強しなさい!」
「いい点数とったらお小遣いあげる」
「いい塾へ行かせて,良い大学へ入れば成功する」
これらの言葉にエビデンス(根拠)があるのでしょうか?
もしかすると牛乳と同じように,なんとなく昔からそう言われてきたから,背の高いあの子がやっていたから,子供を東大にいれたお母さんがやっていたから・・・
この程度の考え方で上の様な発言をしていたならば,我々は反省しなければなりません.
テレビやゲームを止めさせたら学習時間が増えるのか?
少人数学級はいいのか?
タブレット端末を用いた授業は?
これらの疑問にエビデンスがあるのかないのか?
エビデンスがないことに多額の予算(税金)が使われていないのか?
エビデンスがないならば,構築するようなことが日本で行われているのか?
これらの疑問に対す答えが,この本には書かれています.
日本の教育はヤバいぞ!
C55は決してエビデンス至上主義ではありません.個々の差は当然考慮されるべきであると考えますし,今回の娘の件などまさに個々の事例でありますので.
しかし,集団を対象として我々が納めた税金で行われるとなると,しっかし検証された結果に基づいた施策でなければならないと思っています.
まとめ
給食の牛乳から話を大きくすると,日本の教育現場での問題も関連しているのでは?と思います,
エビデンス至上主義ではありませんが,集団に対して税金を投入して施策を行うならば,しっかりしたエビデンスに基づいて行って欲しいと思います.
もちろん個々の事例は個々で対処する.当然です.
子供の教育を考える上で,下記の本もとても勉強になりました.